【’20-’21年5月編】Z世代実況レポータが知り得る「Z世代のトレンド大集」

Culture & Trend

※注)
総文字数20,000字を超える内容となっています。
大きく4項目( ”SDGs”、”ネオ・デジタルネイティブ”、”マーケティング”、”ライフスタイル”)に分けていますので、必要な箇所だけ飛び飛びで読む方法をオススメします。

  1. なぜZ世代を知るべきなのか
  2. Z世代の概要とその背景
  3. SDGsとZ世代
    1. ソーシャルアクト
    2. エシカル思考
    3. LGBTQ+
    4. 働き方
  4. ネオ・デジタルネイティブとしてのZ世代
    1. ソーシャルメディアとの関わり
    2. ソーシャルメディアのオートレコメンド機能
    3. Z世代の”AI読み”
    4. Z世代に特化されたソーシャルメディア
  5. マーケティングとZ世代
    1. Z世代に向けた製品
      1. 【メイク】NARS|ファンデーション
      2. 【ファッション】LIT DEPARTMENT|D2Cブランド
      3. 【デイリーアイテム】大王製紙|生理用ナプキン
      4. 【美容】パナソニック|電動シェーバー
      5. 【ガジェット】NEC|ノートパソコン
      6. 【自動車】東風ホンダ|新型「ライフ」
      7. 【アプリ】ふくおかフィナンシャルグループ|デジタルバンクアプリ
    2. Z世代の消費行動
    3. Z世代の調査媒体
      1. 【リサーチ】Z総研
      2. 【リサーチ】株式会社dot
      3. 【リサーチ】YNGpot.™
      4. 【エンタメ系メディア】めっちゃKawaii TV
      5. 【エンタメ系メディア】超十代チャンネル
      6. 【エンタメ系メディア】CultureZ
      7. 【エンタメ系メディア】GirlyBeautySociety
  6. Z世代とライフスタイル
    1. 「リアルとデジタル」「個と他」の二面性
    2. 個を効果的に表出する”スタンス思考”
    3. メンタルヘルスを支え、エンタメをも生み出す”チル”カルチャー 
    4. ポストジャンル性
    5. D&Iへと繋がる”DIYメンタリティ”
    6. Z世代の思う”ホンモノ”
    7. Z世代が心を許せる”最も身近な存在”
    8. Z世代の”身の丈消費”
    9. 先祖返りするZ世代のオールド・ニュートレンド
  7. まとめ

なぜZ世代を知るべきなのか

『Z世代の姿を追い続けねばならない』

デジタルとリアルが融和した2021年には、彼らZ世代(もしくはそれ以降の世代)にしか見えない地平線が存在すると思われてなりません。

ネオ・デジタルネイティブ、エシカルネイティブ、リモートネイティブ、先祖返り世代…
さまざまな異名を持つ彼ら・彼女らの姿を追うことは、「SDGsを目指す新世界」に必要なニューリテラシーを発見し啓発することに直結しています。しかしながら、はたしてZ世代のその価値に気が付いている人はどれほどいるのでしょうか?
『なんとなく目新しい世代だ』と思う人が多くを占めているように感じてならず、Z世代の特徴や傾向、SDGsと関わりのある事象をオーバービューとしてまとめた【Z世代エクスプロージョン】Vol.1、2を今まで作成してきました。

こうした世代を一括りにする試みに否定的な意見を持たれることも起こり得るでしょう。
しかし、前提として私がZ世代に焦点を絞ったコンテンツを作成するのは既述の通り「Z世代はデジタルとリアルが融和し地球共同体的指標としてSDGsが掲げられている2021年を牽引し得る存在」なのであり、その動向を追うことで他世代にとってのニューリテラシー発見と啓発に帰するためです。

若者マーケティング機関SHIBUYA109 lab 所長 長田麻衣氏のTweet

長田氏のTweetを参照させていただきましたが、これと同様に、Vol.3となるこのZ世代エクスプロージョンもZ世代の真価を発見・理解する試みとして捉えています。
『なんとなく目新しい世代だ』との印象が多いように感じられると記しましたが、その意識を改めZ世代を多層的に認知することで、2021年以降の世界でなすべきことをより強く認識できるよう心境変化に1mmでも寄与できれば幸いです。はたまた、Z世代へのマーケティング施策や動向把握のため、包括的な情報を得たい方に微力であれどお力添えできればと考えています。

本題に戻ると、今回のVol.3では、”SDGs”、”ネオ・デジタルネイティブ”、”マーケティング”、”ライフスタイル”の4観点からZ世代に関わる事象や特徴をまとめています。
では早速、ミレニアル世代と比較しつつZ世代の外観を見ていくところから始めていきましょう。

Z世代の概要とその背景

’90年代後半に生まれたZ世代は、世相や経済に絶大な影響を及ぼした歴史的出来事が度重なるタイミングに幼少期を過ごしています。
それは同時にデジタルテクノロジーの発達が高まりを見せた時期でもあり、ミレニアル以前の世代と比較すればかつてないほどデジタルへの親しみを持つ。これこそが”ネオ・デジタルネイティブ”と呼ばれる所以です。

(ミレニアル世代もデジタルネイティブと呼ばれることがありますが、正しくは先駆者的なニュアンスの強い”デジタル・パイオニア”。これと区別するため、ここではネオ・デジタルネイティブと表しています。)

上図からは、2016年の調査時点でも高校生の97.6%がスマホを所有していることがわかります。
また2020年MMD研究所の発表から「小学生の4割が早くもスマホを所有している」ことも窺え、年々と若年層への完全な普及とスマホデビュー早期化が進んでいます。
スマホをデジタルへダイブするツールと捉えれば「スマホデビュー=デジタル参与」と位置付けることができ、リアルのみの生活からデジタルが溶け込んだOMOOnline Marged with Offline)上での生活にシフトしていると分かります。

株式会社プレストック代表取締役 田中あづみ氏監修記事の上図を参考にしても、とりわけソーシャルメディア上の「自己発信が得意」だという点からZ世代がネオ・デジタルネイティブだと言えます。
ここで触れておきたいのは、Z世代はソーシャルメディアの使用に長けたソーシャルネイティブであり、各媒体をインタレストやコミュニティなどの「目的別に使い分けることができる」という点。

地球全体で持続可能な社会を展開できるよう2015年の国連サミットで加盟国が制定した取り決め”SDGs“に触れるにあたっては、必ずと言っていいほどZ世代が登場し深い関わりを呈しています。

グレタ・トゥーンベリ氏のようなZ世代アクティビストの存在や、昨年コロナ禍で盛り上がりを見せたBLM運動など、SDGsの17指標に連関し持続可能な社会を目指すソーシャルアクトをZ世代は手元のディスプレイを通じて目の当たりにしており(もしくはすでに参画している)、そうした側面からZ世代はSDGsへの意識が一際高いことでも知られています。

ここまで、大まかなZ世代の特徴とその背景を見てきました。
次項以降は”SDGs”、”ネオ・デジタルネイティブ”、”マーケティング”、”ライフスタイル”の4観点から具体的な特徴を示していきます。

SDGsとZ世代

ソーシャルアクト

SDGs(Sustainable Development Goals;持続可能な開発目標)を耳にし思い浮かぶものを挙げるとすれば、環境保全や人種・性差の是正などでしょう。ここでは、そうした目的のもと実施されるキャンペーンやデモ、SNSでの啓発などの”実質的な行動”を総称してソーシャルアクトと呼んでいます。

そこにZ世代という要素をかけあわせれば、既述したグレタ・トゥーンベリ氏やソーシャルメディアを中心として爆発的な広がりを見せたBlack Lives Matter運動、外国人実習生への人権侵害防止啓発など、彼らの存在なくしては語れないソーシャルアクトが数多く見られます。

日本経済新聞 2020年10月10日刊行

日本経済新聞では、コロナ禍の給付金を寄付に向けた20代が最多だったことを報じており、また「多様な社会運動と労働組合に関する意識調査」ではZ世代の7割デジタル上での参画も含めたソーシャルアクトに参加したい』と意欲を示しています。
国家や経済、人種など国境横断的に生じたさまざまな歴史的出来事を生まれながらに経験。
デジタルの力で「意図せずとも情報に触れられる環境」にも助けられ、彼らZ世代は国境横断的かつ地球共同体的にソーシャルアクトへ向かう傾向にあるといえるでしょう。

エシカル思考

以上のようなソーシャルアクトの根底にあるのが、エシカル思考です。

倫理を示すエシカルとは、「人として守るべき善、道徳」。
エシカル思考とは、地域の活性化や雇用など人・社会・環境に配慮した行動思考を指し、いわばSDGsの持続可能な社会を見据え“現代”で守られるべき善を意識した思考です。
「エシカルに考え(エシカル思考)、社会の未来のためアクションを取る(ソーシャルアクト)」という”思考→行動”の流れをイメージできるように、エシカル思考はソーシャルアクトの土台であり両者はSDGsそれを目指す実行動を支える”思考背景”となっています。

エシカルネイティブとも呼ばれるZ世代。
彼らの特筆に値する事例を取り上げるならば、
ユーグレナ初代CFO(最高未来責任者)となった現役大学生小澤 杏子氏が真っ先に挙げられます。
また、一般社団法人炭素回収技術研究機構 代表理事・機構長の村木 風海氏
草ストローの輸入販売を行う合同会社HAYAMIの代表社員 大久保 夏斗氏
鹿廃棄問題解決に向かいオリジナルブランドDeervery(ディアベリー)を立ち上げた渡辺 洋平氏
SDGsを『誰一人取り残さない世界を作るゲーム』と語る、国内最大級の中高生SDGs団体Sustainable Gameを率いる山口 由人氏も欠かせない存在です。Sustainable Game は先日、ソーシャルグッドなリアリティ番組「SPINZ」をリリースし話題を呼んでいますね。

また余談ですが、持続可能な社会を目指すエシカル思考を元とした”ヴィーガン市場”については、
近年食品のみならずコスメや美容品などのヴィーガン・ビューティ、ファッションでのヴィーガン・ファッションなどが欧米Z世代を中心にじわじわと人気を高めています。
動物性物質を用いないヴィーガンのみならず、残虐な動物実験を経ない製品であるクルエルティ・フリーの発端もエシカル思考であることも記しておきます。

LGBTQ+

今年3月、北海道の同性カップルらが「同性婚を認めないのは違憲」とし訴訟を起こしました。
札幌地裁は、「法の元の平等に反する」という判断を下し法を司る国内いち裁判所でようやく『同性間の婚姻は認められるべきだ』と認識されたのです。

このように時代の流れとしても異性愛をはじめとするLGBTQ+への理解は深まりつつあります。
ジェンダー平等はSDGs5番目に制定された取り決めでもあり、そこへの知見を備えたZ世代は今までの世代と比較すればかつてないほどにLGBTQ+に対しリベラル思考を備えました。
事実、米国のZ世代では6人に1人がヘテロセクシャル以外のLGBTQ+を自認しており、かつそれを両親にアウティングできるZ世代が増加していることもわかっています。

またZ世代を含む20代に対し同性愛への寛容度を調査した「世界価値観調査:2017-2020」を参照すれば、国内20代では10点満点のうち自己評定平均8.58点となっています。この年齢区分に限定すれば、日本の若者層の同性愛受け入れの姿勢はかなり前向きであることが分かります。

ただし、”寛容さ”という表現からLGBTQ+全般への理解を示すものだとは断定できず、未だ蔓延る「ヘテロセクシャル一等のジェンダーヒエラルキー」を感じざるを得ません。このことは一般社団法人fair代表理事 松岡宗嗣氏の「LGBT理解増進法案」に対するコメントからも窺えます。

ミクロな事例ではありますが、
男女二元論に収めないセクシャリティ:Xジェンダーの一途を辿る、ファーリーについても言及しておきたいと思います。

ファーリーとは日本でいうところの”ケモナー”に近い存在ですが、個人的なイメージとしてこちらは二次元色が強くイコールではありません。
ファーソナ(ファーリーの人格)を使い分けることで自身のアイデンティティとは異なるセクシャリティ/人格を表出することができ、上図で挙げているファーリーオーナー:Grinsomeは、ファーソナとしてAozoraとSleepy、Grinの3つの人格を持つ。(詳しくはGrinsomeのこちらのTikTok動画を参照)

特筆すべきはファーリーコミュニティメンバーの多くがZ世代だということ。
出例したGrinsomeも22歳の現役大学生ファーリー・インフルエンサーで、冒頭でミクロな事例と断ったが、ここからも既述したZ世代のLGBTQ+理解と多様性思考の深淵を垣間見ることができます。

働き方

持続可能が強調されるSDGsでは、消費行動やLGBTQ+、貧富格差是正、教育普及などにのみ注目されがち。
しかし、SDGsの第8項目「働き方と経済成長」にあるように、経済の持続可能性を高めるためにも個々人の”働き方”もSDGs触れられている重要な項目です。コロナ禍拡大と比例し拡大されていったDX(デジタルトランスフォーメーション)施策により、今や東京圏内でのリモートワーク実施率は28%にまで上ります。また同時期には大学をはじめとする教育機関でもリモート授業が実際され、これこそがZ世代がリモートネイティブと呼ばれる所以となっています。

ですが、リモートネイティブ誕生とは別に、この「社会が人々に強いたニューノーマル」は人々に寂寞とした将来への不安や既存労働スタイルに従うことへの危惧を思わせました。既存概念を切り崩す大きな反動によって、リモートワークや副業など、既存慣習を脱した”ニューノーマル企業“に希望を寄せることに繋がっています。結果、Z世代が就職先に求める条件として「リモートワーク可能」「副業可能」「多様性の理解」「上下の軋轢のなさ」などを優先的に挙げる傾向が生じました。

またクリエイティブ支援やEC機能、ロジスティクスプラットフォームの発達により”起業という働き方“のハードルも一層下がり、後述するZ世代のDIYメンタリティーを刺激。従来の「パッションに溢れた起業」から「労働形態の1つとしての起業」とする選択も現れ、ステレオタイプに囚われた終身雇用スタイルはZ世代を境に完全に崩壊すると断言できるでしょう。

蛇足ですが、急激に変化した”ニューノーマル”に対しても、存外Z世代をはじめとする若者層(と女性)はポジティブな思考を持つ傾向にあると SIGNING Covid-19 Social Impact Report から分かっています。

ネオ・デジタルネイティブとしてのZ世代

ソーシャルメディアとの関わり

続いて、本記事2つ目の項目である”ネオ・デジタルネイティブ”を主軸にオーバービューを進めていきます。
冒頭でZ世代の概観を見た時「スマホデビューの早さ=デジタル参与の早さ」と解釈しました。
Z世代がデジタル界へダイブする時期の早さに比例し、”テクノロジーへの親しみ”をより強く備えていることがネオ・デジタルネイティブの大きな特徴です。

※注)
ここでのソーシャルメディアとは、メッセージ機能や不特定多数とのコミュニケーション、画像や音声、EC、動画配信などの複合的なメディア機能をも兼ね揃えた主要SNSに限定されず、上述したいずれかの機能に特化したYoutubeやClubhouse、TikTok、Tinderなどをも包含したメディアを指します。

デジタル・パイオニアと呼ばれるミレニアル世代も先駆者的にデジタル環境に親しみつつ育ってきたことに変わりはりません。しかし、現在爆発的な広がりを見せている主要SNS(LINE, Twitter, Facebook, Instagarm, TikTok)は、彼らミレニアルが社会参入を果たした頃ではFacebookとTwitterほどしか確認されていません。
1981~1995年の間に誕生したミレニアル世代の中央値年齢(2021年時点で満34歳)が社会進出を果たした頃、2011年のSNS利用状況は以下のようになっています。

当時Facebookは好調だったものの、2020年時点のHootsuiteのレポートでは国内の利用率は30%と報告され10年間でわずか9ポイントの増加幅に収まっています(10代のZ世代間でのFacebook利用率は全体以上の落ち込みを見せ30%を下回る調査も確認できます)。
2006年に誕生したTwitterは、国民性とマッチし現在もZ世代を含めかなりの利用率を誇るも、2017年のデータ(月間アクティブユーザー数4500万)以降ユーザー数更新の発表は見られません。InstagramやLINEに至っては登場は2010年からでした。

以上のようなデータから、ひとえに”デジタルネイティブ”といってもZ世代とミレニアル世代とではソーシャルメディアの普及状況とメインプラットフォームにこうも違いがあることがわかります。
新たに登場したInstagramやTikTok、既存のプラットフォームを指してもソーシャルコマースの側面が強調されていたり、Youtubeの”Youtubeショート“やTwitterの”Space“など新たな機能が日々アップデートされています。こうした「より複雑なメディアリテラシー」を求められるソーシャルメディアの使用に長けているZ世代だからこそ、ミレニアルと区別したネオ・デジタルネイティブが適切な表現だといえます。

ソーシャルメディアのオートレコメンド機能

Z世代は、隣り合った世代:ミレニアルとは異なる位置でのデジタルネイティブであることが分かりました。
ググるよりも”タグる“(Instagramのハッシュタグで検索すること)傾向にあったり、SNS上での他者とのコミュニケーションに大きな抵抗感を持たない点、複数アカウントを駆使し興味関心と所属コミュニティごとにアカウントを使い分ける点などが挙げられるようにソーシャルメディアを縦横無尽に駆使しています。そのと背景してはZ世代がソーシャルネイティブであることに尽きるのですが、この特質を浮かび上がらせた側面としてソーシャルメディアの「レコメンド機能の発達」が挙げられます。

まずあなたは、Instagramのストーリーズやイムラインに並ぶ投稿やコメントがどのような順で並べられているかご存知でしょうか?
タイムラインを下から順に見ていくと、「(コメント欄も同様に)必ずしも時系列に並べられているわけではない」ことに気がつくはずです。これは、あなたが日頃Instagram上で頻繁に閲覧したりいいね・コメントを付与するユーザー・投稿コンテンツの傾向をもとに、最もあなたが関心をもつであろうコンテンツの順に配置されています。(フィードのみでいえばTwitterもそうであるが、こちらは”コンテンツ設定”から任意に変更が可能)

Amazonや楽天市場、Youtube、Netflix、Spotifyも回遊履歴によって「あなたへのおすすめ:FYPFor Your Page)」が表示されるように、こうしたレコメンド機能はなにもInstagramに限ったことではありません。ましてや、10~20代に絶大な人気を誇るTikTokではFYPがメインフィード欄となっており、現れる投稿全てがレコメンド機能に基づいています。
ミレニアルが悩まされた”LINE疲れ“というソーシャルメディで相手と対峙するにあたってのプレッシャーは感じにくい世代ではあるも、ソーシャルメディアの巧みなオートレコメンドによって泥沼にいるかのように回遊を続けてしまうのです。

令和元年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書概要」を参考にしても、10〜20代の利用時間が突出していることがわかります。以下の「10代女性のSNS利用実態(memedays)」を見ても、女性に限定されてはいるが利用目的の2位には『暇つぶし』がランクイン。

一方ここでは、1位『情報収集』や3位『推しの応援』とユニークな結果もみられます。とりわけ”推し“(推しメンバーを表す”推しメン”がさらに短縮化された表現)については2010年代頃のミレニアルへの調査ではあまり見られない利用目的でもあり、特筆に値する点です。
“推し”についての考察は本記事後半で追って記述していますので、ここでは僭越ながらZ世代との関わりをまとめた筆者執筆の2記事を掲載させていただきます。

ソーシャルメディの利用は、ソーシャルアクトに包含されるクリックティビズム“参加”や“支援する”などのアイコンをクリックし、デスクトップ/モバイル上からデジタル経由で参与すること)にも繋がり、ここへの参加のハードルを一段と下げてくれる喜ばしい側面もあります。またソーシャルメディア上のコンテンツにエンゲージメントを付与し自身の意見を醸成されたりと、デジタル上にもたらす数多くのメリットがあるということだけは記しておきます。

Z世代の”AI読み”

国立情報学研究所の新井紀子教授の見解によれば、中高生を含む近年の日本人には”AI読み“の傾向が際立っているといいます。

AI読みは、文章の”機能語“(『……のうち』『……の時』『……以外』など)をスキップしてしまうAI(人工知能; Google 音声検索やアレクサなどにみる)特有の読み方。上記記事では以下のような問題があったようで、中高校生の回答率が3割以下と極めて低く機能語の認識不足を指摘せざるを得ない材料となっています。

もとより現代人の多くが所持するスマートフォンの小さなディスプレイは、文字よりも動画・静止画の表示の方が視認性が高くなります。加え、脳に伝わる情報の約90%は視覚的情報で、写真や動画などのビジュアル情報はテキスト情報よりも約6万倍早い処理速度を誇るという背景も相まり、上記の設問への正答率が低かった中高生間ではInstagarmやTikTokなど写真・動画中心のソーシャルメディアが人気である点と相関関係があります。

Z世代に特化されたソーシャルメディア

中国トップインターネットメディアの一つである36Krから登場しZ世代に絶大な人気誇る感情知能型SNSアプリSoulは、2019年に日本にも上陸しました。

Tinderのようなマッチング機能を備え”いいね”を実装しないフランス初のティーンのためのSNSアプリYubo、Q&A形式でInstagramストーリーズのような仕様が目立つF3、近日巨額のシード資金を調達したTikTok型インターフェースのマッチングアプリSnackも若者向けの開発方指針を抱き続けている…
上述したようなソーシャルメディアは一例に過ぎず、今やさまざまなZ世代向けソーシャルメディアが登場しています。

今回この項で触れるのは、多くのZ世代ユーザーを抱えかつ国産ソーシャルメディアでもあるYay!パラレル

Yay!は先日のプレスリリースで登録ユーザー数3000万人を突破、Z世代を含む20代ユーザーが85%を占めていると発表があったばかり。「国内最大級の雑談通話アプリ」で、興味関心から成る”サークル機能”を活用しよりクローズな関係性を構築できます。
個人間のチャット機能も実装されていますが、ガイドラインに反すトラブルを避けるため年齢差によってはチャットができないよう厳格な監視体制が敷かれています。他ユーザーからの通報を複数回に渡って受けガイドラインに違反した場合はプロフィールが”ゴミ虫くん“に変更されるなど、その徹底ぶりがうかがるプラットフォームです。

パラレルでも同様に25歳以下の若年ユーザーが70%を占めており、コロナ禍で急激なユーザー数増加を達成。
メインコンセプトとして『友達とオンラインのたまり場をつくろう』を掲げていて、Zoom飲み会のように「決まった時間に集まる」オンラインに拘束されたスタンスではなくまさしくこのプラットフォームが”たまり場”、つまり「いつ集まってもいいし、集まっても何もしなくてもいい、したければすればいい場所」なのです。
基本的なチャット・通話機能実装はもちろんのこと、画面共有やミニゲームなど”何かする時”のための機能が充実してる点が特徴です。通話が開始されたタイミングやオンライン状況の把握など、効果的に”たまり場”へ向かえるための補助線も見逃せません。

マーケティングとZ世代

Z世代に向けた製品

高いソーシャルメディアへのリテラシーと可処分時間、爆発的な拡散力を備えたZ世代だが、とりわけ国内では人口層として多くはなく消費力も未だ乏しい状態。それにも関わらず、彼らは多数のブランド・市場から熱烈なアプローチを受けています。

上述したソーシャルメディア市場のほか、アパレルやコスメ、ガジェット、ブティックなど、その市場展開は数知れず。加え、Z世代自身が事業者となり自身の世代(=Z世代)に向けた製品を開発するケースも多く見受けられます。
ここでは、2020年から現在までに確認できたZ世代をターゲットとした製品を紹介していきたいと思います。

【メイク】NARS|ファンデーション

若年期のため油分の分泌が多く、モバイル端末のブルーライトを浴びることの多いZ世代に向け昨年10月にプレローンチされた化粧品ブランドNARSのファンデーション。
SDGs的価値の訴求(クルエルティフリーや環境汚染物質排出を抑えた開発など)ではなく、Z世代の年齢的な特質を捉えた機能的価値側面の強い製品。

【ファッション】LIT DEPARTMENT|D2Cブランド

1997年生まれのZ世代YouTuber古川優香氏が立ち上げたD2Cファッションブランド。
SGDsへの理解などからクロスバイメンズ/レディースなど性別を気にしない購買)を一般的に捉えるZ世代をターゲットとし、ユニセックスなラインナップを展開。

【デイリーアイテム】大王製紙|生理用ナプキン

生理用ナプキン「エリス(elis)」は、 Z世代を含む10~20代前半の女性が好む香りを東北大学 坂井教授の指導のもと開発。トレンドにも敏感な世代傾向にも考慮し、パッケージカラーにも可愛らしさもプラスされている。

【美容】パナソニック|電動シェーバー

『やっているけど、そう見えない自然さ』を見せる10代Z世代に向けた、ちょっとしたうぶ毛やヒゲ、すね毛を剃ることのできる電動シェーバー。
従来の長方形のごつごつとした印象の電動シェーバーとは一線を画すデザインで、母親や友人など身近な存在のUGC(口コミ)経由さえるマーケティング施策が特徴的。

【ガジェット】NEC|ノートパソコン

綿密なZ世代のペルソナ構築を踏まえた、Z世代と共同開発されたノートパソコン。モバイルファーストが説かれる昨今、とりわけモバイル利用の多いZ世代に向け”スマホライク”を意識した特徴を備える。

【自動車】東風ホンダ|新型「ライフ」

ホンダの中国合弁会社 東風ホンダが「武漢オートショー2020」で公開した新型「ライフ」。
キュートなスタイリングや使い勝手、乗り心地の良さを特徴として備え、中国のZ世代が求める価値観を強く反映した製品。

【アプリ】ふくおかフィナンシャルグループ|デジタルバンクアプリ

目下開発中である、Z世代を含むデジタルネイティブのためのデジタルバンクアプリ「みんなの銀行」。
著しい”銀行離れ”が起き反対にデジタルバンク利用が飛躍的に伸長する現状に鑑み、とりわけデジタルへ親みのあるミレニアル・Z世代をターゲットに「お金の世界のSNS」を目指している。2021年5月下旬ローンチ予定。

さて、ここまで7つの製品(一部国外)を紹介したがこれらはあくまで一例にしか過ぎず、グローバルで見てみればZ世代をターゲットとした製品は山ほど存在しています。
イギリスのZ世代をターゲットにしたスポーツ飲料ブランドSWEYや、大学を卒業し就業まもないZ世代のため、クレジットカード申請や保険、給料交渉などのライフスタイルプランニングを集約し『大人であることを1カ所で定義する場所』を目指すアメリカのスタートアップRealworldは2021年5月にモバイルアプリをローンチ予定。また仏ラグジュアリーファッションブランドBa&shは、Z世代向けにスタイリッシュなスニーカーを製品リストに追加しています。

Z世代の消費行動

中国伝媒大学文化産業管理学院党総支の朱敏副書記はこちらの記事で、市場横断的に消費ターゲットとされ『市場を支配する』とまでいわれるZ世代の価値と威力を次のように形容していました。

(Z世代の文化消費の価値と威力がもたらすのは)… 内需を刺激し、経済の質の高い発展をサポートできるだけでなく、ハイクオリティの文化的製品の世界進出を推進する …

単なる”情報拡散源”や”次なる消費者”と認識されているのではなく、「文化と経済の発展に寄与する起爆剤的存在」と見ることができるでしょう。
ここでは、そうしたZ世代の消費行動とコンバージョンに至るまでのカスタマージャーニーに関連する特徴的な事象を紹介していきます。

最初に挙げられる点としては、デジタルネイティブとしての側面が際立って見られる“ウェブルーミング”。
EC上でのAR試着や至るメディアから得られる口コミなどから、ウェブ上で得られる製品情報は「リアルとは異なる密度の情報」を獲得できます。そうしたウェブベースでの知識を持って、実店舗で購入に至るスタイルはウェブルーミングと呼ばれます。反対に「リアルな実店舗 → オンライン上のEC」のフローである”ショールーミング“をも、Z世代は製品や価格などによって使い分けます。

ウェブルーミングに長けつつも、オンライン – オフライン間を自由に行き来する消費スタイル:オムニショッパーであることもZ世代の特徴だといえます。

また、既述のエシカル思考と関わりのある領域:”REコマース“もZ世代の特徴的な消費行動の1つです。
メルカリの利用が目立つ近年、一度購入したユーズド品を再販・買取したりレンタルで借り入れるサービス全般を指すREコマース市場は、コロナ禍を経てさらなる高まりを見せています。製品の持続可能な消費に直接繋がることから、その震源地はSDGsに関心を寄せ節約志向でもあるZ世代を中心としています。

そして最後に挙げるのは、”CXCustomer Experience)”の充足。
全世代的に、いまや販売店の店員と1度も顔を合わさずデジタル上で製品のリサーチから購入にまで至るのはさほど珍しいことではないでしょう。しかしそれがゆえに、返品手続きや使用後の商品情報など購入後のトラブルサポートをもデジタル上でストレスレスに完了させられるかどうかは、サイト運営元の裁量によってさまざま。”対面”という無条件に安心できる従来の接客方法を取らないのであれば、デジタル上では迅速に対応してもらせるカスタマーサポートやQ&A、口コミの掲載などなど顧客満足度向上とロイヤリティ醸成のためにもCXへの配慮はZ世代以外であっても非常に重要なポイントです。

(…最近とある銀行口座を開設したのですが、申請書類に不備がありその旨を郵送で伝えられた時、衝撃と伴にとてつもない煩雑さを覚えました…)

ある種ECが「オウンドメディア化・アーンドメディア化」されている昨今、製品提供元のカスタマーサポートのクオリティはSNSでサーチすれば把握するのにさほど難しくはない情報です。
それがソーシャルネイティブであるZ世代の手にかかれば、いとも簡単に購入後のCXのあるようが暴かれることでしょう。
2020年5月発表の総務省「家計消費状況調査」によれば、ネットショッピングの項目で全世帯の過半数が利用しているそうです。以上のような状況から、2021年にオンラインショッピングを展開するのならZ世代をはじめとする顧客全体の満足度向上のためにもCXは欠かせないポイントとなるでしょう。

Z世代の調査媒体

デジタルへのかつてない親しみやSDGsに基づくエシカル思考など、彼らを取り囲むテクノロジーや情勢指針によりかつてない変容を遂げた全く新しい世代、Z世代。

その特徴がゆえに、彼ら専用に開発されたソーシャルメディアの誕生やブランドのメインターゲットとされることも少なくはなく、自ずとそのトレンドや消費傾向を調査するシンクタンクやメディアが多数現れることとなりました。ここではそうしたZ世代をテーマとしたリサーチ組織メディアをまとめています。

【リサーチ】Z総研

国内初の「Z世代」を研究対象としたシンクタンク組織。
株式会社N.D.Promotionや株式会社ホワイトジョークなどの連携によって組まれた組織で、主にPR TIMESでのプレスリリースやnote、SNSで調査内容を発信。

【リサーチ】株式会社dot

1996年生まれの現役Z世代が代表を務めるイノベーションチーム。
オウンドメディアとして”Z世代会議“を運営し、Z世代の声や意見をブランドへ反映させる施策も実施。グラフィックレコーディングが特徴の可愛らしいリサーチコンテンツからは、まさしくZ世代らしさが感じられる。

【リサーチ】YNGpot.™

YNGpot.™(ヤングポット)はデジタルネイティブのマーケティング専門チーム。noteやプレスリリースにてZ世代を含むデジタルネイティブのトレンドや消費動向を導き出し、マーケティングソリューションの提案まで実施している。

【エンタメ系メディア】めっちゃKawaii TV

BuzzFeed Japan運営のTwitter番組(現在最新番組は3ヶ月前となっている)。
Periscopeを活用し配信しており主にメイクやファッションコンテンツが主で、MCにはりゅうちぇる氏とAKB48 横山由依氏を起用。

【エンタメ系メディア】超十代チャンネル

Youtubeチャンネルにて『今をときめく10代達が様々な企画に挑戦しながら楽しい動画を配信』している。超十代MEDIAではファッションや恋愛、メイク、イベント情報などをティーン(10代)でコンテンツ化。

【エンタメ系メディア】CultureZ

『半径2メートルの”おもしろい”を集めよう』をコンセプトとした文化放送制作のテレビ番組。
パパラピース土佐兄弟などTikTok・Youtubeを起点に活動するクリエイター、インフルエンサーをパーソナリティに迎えている。

【エンタメ系メディア】GirlyBeautySociety

Z世代ターゲットにした美容番組。今年5月よりオリジナル美容動画プラットフォーム公式Youtubeチャンネルにて公開される。
プレスリリース上では”ティーンリーダー”と表現されていたが、ティーン美容界のトライブリーダー的存在である横田真悠氏を起用。

Z世代とライフスタイル

現代は、オンラインとオフラインの直線的な関係性(O2O)から双方の境界が融和した相互補完的な”OMO(Online Marged with Offline)へと変化しています。

それがゆえに、とりわけネオ・デジタルネイティブZ世代には特徴的な傾向が見られることはその時代背景や消費行動の変容からも頷けることでしょう。ここではZ世代のライフスタイルに注目し、その情緒的側面を見ていきたいと思います。

「リアルとデジタル」「個と他」の二面性

TikTok For Business「Z世代白書」を引き合いに出すと、”個性”と”世間体”双方への配慮は他世代に比べるといずれも10ポイント以上高い数値が確認できます。つまり彼らZ世代は、どちらも抜きにして考えることが難しく、三方良しならぬ『自分ヨシ、世間ヨシ』の”二方良し”の思考だといえます。

DXが勢いを増す昨今、Z世代はデジタルを「リアルの代替」とは捉えずあくまでリアルに寄せた”ニア・リアルと捉える傾向にあります。
その一方で、ソーシャルメディア上の容赦ないコメントや炎上のさま、瞬く間に大人気TikTokerへと成長したユーザーのさまを目にし、『個性を露にし時代の寵児となる可能性があること』と『世間体への配慮を欠き干されてしまうこと』というデジタル社会の端的なありようを現実界と異なるものとして捉えているようにも思われます。

個を効果的に表出する”スタンス思考”

自他の狭間に身を置くZ世代。そんな彼らが見出した二方良しの表現方法こそが、この”スタンス思考“です。電通若者研究部の調査によれば“かっこいい”の基準は「明確なスタンスを備えているかどうか」が指標になるといい、そのかっこよさの有無が”推し”(推しメン)にできるかどうかとも関わっています。

【ネオ・デジタルネイティブとしてのZ世代】でも登場した”推し”ですが、
独自のスタンスを備えた推しへは、憧憬のみならず尊敬の念をも醸成します。『推しが尊い』という表現が見られるのも、手の届かない存在への憧れのみならずいち人間としての敬意をファンが抱いていることに起因しているからです。
そうした「明白な意見=スタンス」を持つ”かっこいい”対象を推すことで、ファンは推しの持つアイデンティティを間接的に自身のスタンスとして仮設することが可能となります。つまり、環境保全活動にコミットする姿勢を示す”かっこいい”対象を推すのであれば、自身にも環境保全活動へのエンゲージメントを醸成させることができ間接的に「スタンスを持ったかっこいい自分」を世間に示すことができる、というわけです。

“推し”という存在で、Z世代の「個性も世間体も重視する二面的な承認欲求」を一挙に満たすことができ、この一連の着想をZ世代の”スタンス思考“だと考えています。

メンタルヘルスを支え、エンタメをも生み出す”チル”カルチャー 

コロナ禍による孤立、経済難などが、人々の間でメンタルケアの重要性を際立たせています。

emolmuuteなどジャーナリングを通じたメンタルケアアプリ登場のほか、既述したYay!は「特定非営利活動法人あなたのいばしょ」と連携し主要ユーザーZ世代のみならず、あらゆるメンタルケアが必要なユーザーへの門扉を開放しています。
コロナ禍以前でも、令和元年版自殺対策白書を見ればその逼迫さが窺えるでしょう。Z世代を包含する10~39歳の死因順位1位は自殺であり、15~34歳の死因順位1位が自殺となっているのはG7の中でも日本のみ。この状況は国際的に見ても国内のメンタルヘルス普及状況に憂いを感じざるを得ません。

本項では、そうしたメンタルヘルスと深い関わりを持つZ世代発のカルチャー”チルに触れていきます。

ゆったりする、落ち着く雰囲気などを形容する”チルい”は英単語 chill out に由来。若者の間でスラング的に使用され、今やリラクゼージョンドリンクの広告文に起用されるほどとなっています。説明するまでもなくメンタルヘルスと「チル=ゆったりして落ち着くこと」の関係性は自明で、心を落ち着かせることそれ自体がメンタルケアに直結しています。

シーシャCBDはその最たる製品ではないでしょうか?

長時間ゆったりと香りや味わいを楽しめる水タバコ(シーシャ)はZ世代間でもチルの代名詞的存在とさレています。また、電子タバコのリキッドや舌下摂取、飲食物にドロップして使用できるCBD(大麻から合法成分のみを抽出したオイル)もリラクゼーションアイテムの1つとして近年名を馳せています。
さらには、モクテル(ノンアルコールカクテル)、夜ピク(夜のピクニック…作家 恩田陸氏の作品名ではなく)など、どこか”エモさ“を孕んだチル体験も話題を呼んでいます。
ここから、チルはメンタルヘルスに寄与するのみならず「Z世代のエモいエンターテイメント」としても機能していることが窺えるでしょう。

なお直近のメンタルヘルスに関する調査には大久保敏弘・NIRA 総合研究 開発機構(2021)「第 4 回テレワークに関する就業者実態調査(速報)」が挙げられ、2020年3月〜2021年4月の全世代的なメンタルヘルス状況は改善傾向にあるとの報告がされています。

ポストジャンル性

あなたは、1日あたりどれぐらいの時間音楽を聴いていますか?
そして、その音楽はどんなジャンルでしょうか?

Z世代の女性を挙げれば、彼女らの約97%は1日に最低5つの音楽ジャンルを聴いていることがわかっています。音楽ストリーミングサービス(SpotifyやApple Music)の普及とそのレコメンド機能が直接的な要因となりますが、これには”楽曲の構成”にも関わりがあるといえます。
注意深く近年の楽曲に耳を傾けてみると分かりますが、とりわけマッシュアップやEDM調では最初のイントロ数秒だけではジャンルを判断できない「ジャンル横断的な楽曲構成」が増えていることに気が付くはずです。

i-D で記述されていたZ世代を代表するアーティスト:ビリーの上図の言葉にあるように、彼女らにとって“ジャンル分け”はもはや「過去の遺物」になりつつあります。
そうしたZ世代のフィルターを介し音楽ジャンルを見ていけば、Z世代のジャンル横断的なさまは単なるストリーミングサービスのオートレコメンドの影響のみならず、ジェンダー二元論やライフスタイルなどの既存概念打破へと邁進する”ポストジャンル性という一つのZ世代の特性に帰着させることができるのではないでしょうか。

音楽ジャンルにみるポストジャンル性を考えれば、TikTokに触れないわけにはいきません。

TikTokユーザー988人から回答を得た当調査では、『新たな音楽を発見するプラットフォームはどこか?』という問いに対しSpotifyとわずか6ポイントの差でTikTokが2位にランクインしています(TikTokは短尺動画を媒介としたソーシャルメディアであるにも関わらず!)。

ユーザーの多くを若年層が占め完全レコメンドで動画を視聴できるTikTokは、そもそもリリース時代やボーカルの有無、BPMなどジャンルを介さない非セクショナリズム的な音楽との出会い方を実現しています。そうした媒体に慣れ親しんでいるZ世代は、「意図してポスト・ジャンル性を選択する」というより寧ろ自然にその形に寄っているといえるます。さらにそこへ、SGDsの”非セクショナリズム思考”が流れ込めば、音楽におけるポスト・ジャンル性が全般的な既成概念を打ち壊す促進剤として機能していると言っても過言ではないでしょう。

D&Iへと繋がる”DIYメンタリティ”

「Z世代と音楽ジャンル」というスコープでみれば、非セクショナリズム的なSDGsのD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)普及も相まり”ジャンル”という既存概念が崩壊しつつあることに触れました。
ここで取り上げる”DIYメンタリティ“のDIYは 『Do It Yourself』を意味し、「既存の方法に囚われず自分で道を切り開く開拓精神」と言い換えられます。

Spotify for Brands CULTURE NEXT 2020 によれば、開拓精神ともいえるZ世代のDIYメンタリティは、特に”就業”に関わる点で際立っていることが分かります。
コロナ禍で主要都市をはじめ各地で取り入れられたリモートワークやオンライン授業は、既存の働き方・学び方の変革に大きく寄与した一方、YoutubeやCourseraなどの動画配信プラットフォームを活用すれば「オンライン上でも既存の物事の多くを完結できること」も明るみにしました。(ネットの高校ともいわれるN高もこのコロナ禍でさらなる注目と有意性を獲得!)

またアメリカのみならず国内でも”大学奨学金の返済問題”は多々議題に上ることからも、負債を背負ってまでネット上で済ませられる大学に通うことには当然疑問が付されるでしょう。
さらに、BASEやShopifyのECプラットフォーム、AdobeやPhotoshopなどデザインアプリケーションも多様に展開されており、ECとSNSを駆使すれば起業ハードルがかなり低くなる背景も相まって『大学を卒業し企業に就職』という既存レールが崩れつつあります。
Spotify CULTURE NEXT 2020 を読み解いた細川元氏の記事にもあるように、2019年TD Ameritradeの調査では米国在住のZ世代89%が高校卒業後、4年生大学以外の進路を検討しているほどで、既存の労働文化は今や過渡期を通り過ぎようとしています。

このことからも、単なる部屋のデコレーションや日曜大工のDIYに収まらず、ライフスケールでも『Do It Yourself』を実践するアントレプレナーシップは、Z世代の魅力的な特徴の1つだといえます。
ただしこのDIYメンタリティは、必ずしも全Z世代に当てはまるものではありません。

「お茶ベンチャー」という領域で活躍する株式会社TeaRoom代表取締役社長の岩本涼氏や、
落語クリエイティブチームZ落語を率いる桂枝之進氏など、かつてないユニークさでアントレプレナーシップを発揮するZ世代の活躍を見ることもできますが、DIYメンタリティは決して起業というかたちでのみ現れるわけではないことは認めておきたい…。
その理由を説明するため、以下に活動家ナオミ・クラインの言葉を援用しました。

Z世代にとってはインターセクショナリティ(交差性)が全てです。
── 彼らにとって重要なのは、点を繋ぎ合わせて問題の根源を見つけることであり、だからこそ、恐れること無く根底から物事を変えていくことができるのです。

Vogue|次なる地球保全を担うZ世代に向けたナオミ・クラインのコメント

ここでクライン氏が言い表しているのは「恐れること無く根底から物事を変えていける精神 = DIYメンタリティ」が帰す点が「インターセクショナリティ」だということ。

  • “インターセクショナリティ”を詳しく知りたい方はコチラを参照ください
Yasmin Lajoie|An Intersectional Style Guide 掲載画像を参照

インターセクショナリティを端的に言うなれば、「”セクショナリズムの交差点に埋もれたマイノリティ“を見出す枠組み」です。そもそも非セクショナリズムな思考が可能なZ世代だからこそインターセクショナリティを自然に当てはめることができ、人種や階級などのバイアスに恐れをなすことなく既存の不合理な慣習や差別を打ち破る力を秘めています。

インターセクショナリティを当てはめられるZ世代だからこそ、既存概念に怯まずSDGsを先進的に理解でき、それをソーシャルアクトなどのかたちで是正し持続可能な社会を切り開いていける…
そうした開拓精神:DIY精神をここに見出すことができます。
やや遠回りな説明となりましたが以上のようなことから、DIYメンタリティは起業というかたちのみならずZ世代が持続可能な社会に向かうその姿勢自体から、すでに滲み出ているものなのです。

Z世代の思う”ホンモノ”

突然ですが、あなたはユニークな施策を打ち出し続ける国内タクシー会社をご存知でしょうか?

TikTokで”三和交通“と検索してみれば『これがタクシー会社か!』と驚くことでしょうが、
同時にそのTikTok上のコンテンツからは、三和交通株式会社の社風や雰囲気、ありのままの姿を感じられはしませんでしょうか。

日刊SPA! でのインタビュー記事で、TikTok動画に登場する三和交通 取締役部長 溝口孝英氏は次のように語っていました。

ダンスも完璧じゃなくていい
僕たちも撮影は、常にぶっつけ本番ですが、多少のミスはご愛嬌。
楽しんでいる動画ほど再生回数が伸びるんです。

ダンスもメタボ腹もあくまで等身大

実は、コメントでも触れられているこうした”ありのまま感”はTikTok For Business「Z世代白書」でも言及されているZ世代の特徴の1つを示しているのです。下記図からも、Z世代のおよそ半数が『日常に近く、失敗を含んだ自然なコンテンツは信頼できる』と反応を示しているのがわかります。
(25歳以降と比べると15ポイントほども差が開いてる!)

この不完全さの観点で見れば、TikTokは「Instagramの”映え文化”」と対比的に捉えられるでしょう。もちろんTikTok上でもきらびやかなさまなど、いわゆる”ハレ”の場面を切り取ったコンテンツは見られますが、多くが馬鹿げたあるあるやお笑い、ハウツーネタ、ダンス、リップシンクなどのmemeであり、日常に即したありのままの姿が顕著であることが分かります。
Z世代の関心がナチュ盛り(ナチュラルに盛れるメイク)やチルなどの”映え”から移り変わっています。
かつてInstagramを風靡していた「クロップされ完成された美」とは反対に、Z世代は「自然で不完全なさま」にこそ信頼がおけると判断しているのです。

UGC(User Generated Content; 口コミなどユーザーから生み出されるリアルな声)やオピニオンリーダーに強く影響を受けるZ世代の特徴からも、脚色なく自然に発露されたコンテンツをこそ「信頼できる“ホンモノ”の事実」と認識します。
先日 bitz SPA! フレッシュ に掲載された「わずか9ヶ月でYoutubeチャンネル登録者数10万人を突破した10~20代に人気の “えみ姉” 」も、『あまり飾らない「近所のお姉ちゃん」的存在を目指しています』と語っていることからも、やはりその”自然さ”にはZ世代が惹かれるものを潜めていると窺えます。

サイバー・バズ インフルエンサーサービス局マネージャー海野 萌氏の見解では、膨大な情報・コンテンツが飛び交う中、ソーシャルメディアで好まれる嗜好傾向が”人柄重視型“にシフトしていることを示唆しています。既述した“推し”を選ぶのにもこの人柄重視志向が高まっており、等身大の姿で語られる「失敗も含んだありのままの姿 / コンテンツ」こそがZ世代にとっての”ホンモノ”に取って変わられています。

Z世代が心を許せる”最も身近な存在”

ライター太田奈緒子氏がFRaUに寄せた記事には、太田氏の高校1年生の息子が語るリアルなZ世代高校生のさまが描かれています。「友人との不和を避け、できるだけ穏便な関係を維持する姿」は、以下のような記事・報道を知っていればなお良く理解できるのではないでしょうか。

『人それぞれ』で処理する冷たい距離感
  ー 現代ビジネス
『親友はいらない』コスパが悪いから?傷つきたくないから?
  ー ABEMA TIMES

というのも、コロナ禍でおうち時間を強いられたネオ・デジタルネイティブが向かう先は手元のスマホディスプレイとなり、自ずとデジタル上での「孤立した交際」が助長されている状況です。そんな中、対面リアルで日常的にコミュニケーションを取れる存在は”家族“に限られる。

株式会社SHIBUYA109エンタテイメントが15~18歳の高校生400名に実施した「Z世代の家族に対する意識・実態調査」では、全体の91.5%がLINE、25.9%がInstagramでも家族と関わりを持っていることがわかっています。さらには女子高生の約5人に1人が母親の存在を「親友・友達」と捉えているのも極めてユニークなポイントです。
およそ50%が両親と恋愛についての話をしていることからも、Z世代の家族との関わりが極めて親密であると判断できるでしょう。

Z世代の”身の丈消費”

世界最大規模の金融コングロマリットと言われるクレディ・スイスのグローバル投資年鑑によれば、ミレニアル・X世代・ブーマーの時代と比べてZ世代が投資で得られる収益は1/3ほどに縮小するといいます。

その警鐘を予期していたかのように、2021年の新社会人は前年代と比べ貯蓄する人の割合が5ポイント上昇、金額にしてみれば平均で5000円の貯蓄金額増加という結果に。さらに、ミレニアル世代が社会人1年目から貯蓄を始めた割合が56.3%であったのに対しZ世代では76.6%と20ポイントもの上昇がみられました。

背景には、未曾有のコロナ禍で目の当たりにした個人・企業の資金難や被雇用労働の危うさが影を落としており、Z世代の労働者層が余剰金の多くを貯蓄・投資に回す傾向は国内のみでなく世界的に見られる傾向だとわかっています。

そうした貯蓄傾向に比例し、消費の仕方にも変化が生じます。

SMBC 20代の金銭感覚についての意識調査はミレニアルを含む20~29歳を対象としており、必ずしもZ世代のみに的を絞った内容ではないものの「『多少無理しても、良いものにお金をかけたい』という“背伸び消費”と対照的な“身の丈消費”を志向する人が多い」という結果が現れています。
しかしながら、国内Z世代で見てみれば貯蓄を投資に回す割合はまだまだ多くはありません。コロナ禍で証券会社や仮想通貨運用会社で口座開設数が急増しているのは周知の事実ですが、果たしてZ世代はその中うちのどれほどを占めているのでしょうか。SDGsの教育指針が功を成しているのはすでに窺えますが、次はそんな次世代を担う彼らに”お金の知識”を授けるべきではないかと疑問が残るポイントです。

先祖返りするZ世代のオールド・ニュートレンド

米国Z世代を始めとするTikTokユーザー間で”Cheugy(チュージー)”という単語がTikTokを席巻しているのをご存知でしょうか?誕生自体は2013年だったCheugyはトレンドを踏み外したさまを形容する語であり、Z世代がミレニアル以降の世代を批判的に形容する時に用いられているようです。

Y2KYear of 2 Kilo; 2000年代)ファッションがその代名詞として上げられており、
以下のY2Kトレンドを指南(?)しているInstagramアカウントを見れば、それがどのようなものか外観を掴めるでしょう。

Instagram|y2k*s? より引用

さすがにこれだと『かなりダサい…』と、ミレニアル・Z世代ともども頷くことでしょうが、
今TikTok上で話題に上っているチュージーは他にも、大きなロゴ入りのウッドボードやラテアート、大人になってまでディズニーではしゃぐこと、膝までの長いブーツなどなど、Y2Kファッションの他にも2010~’15年代に流行をみせたミレニアルのトレンドも対象になっているようです。さらに詳しいcheugyトレンドを知りたい方はコチラのInstagramを参照ください。くれぐれもショックを受けないように…

過去のトレンドがいよいよZ世代によって”遺物”となりつつあるのかもしれませんが、
一方で襟付きシャツやマジメな印象を与えるカーディガンなど、今のZ世代にでも見られるようなファッションもがY2Kに包含されていることもあり、例えばジャヴァコーポレーションがZ世代主導で立ち上げた新ブランド「ロートレアモン・ブルーブラン」はY2Kファッションの雰囲気を意図して纏わせているようにさえ思われます。
このように、矛盾を孕みながらも過去のトレンドに関心を寄せる”先祖返り世代ともよばれるのがZ世代であり、コロナ禍にはアナログレコードの販売総額急増アナログカメラのトレンド化コテージコアファラ・カットの再来、中国での韓服ブームなど、USや日本国のみならず隣国でも(回帰の背景は異なれど)”レトロ回帰“が1つのトレンドとなっています。

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上述したいずれのアイテムもミレニアル世代以降の視点で見た”レトロ”ではあるも、Z世代からすればどれも真新しさとともにノスタルジアが重なって映ります(アルファ世代ともなればもはや未知のモノとさえなり得る…)。
このレトロ回帰には、Z世代と家族との親密な関わりや個性の発露、ノスタルジアが生じさせるポジティブなエネルギーなど、今まで見てきたさまざまな要因が関わり合っています。いずれにせよ近頃のメロンソーダの流行からも、今後ともZ世代とレトロの関わりからは目が離せないことでしょう。

まとめ

この大集があなたにとっての”Z世代理解”を少しでも促してくれたなら、大変嬉しく思います。

中国伝媒大学文化産業管理学院党総支の朱敏副書記のZ世代についてのコメントを【Z世代の消費行動】に載せていましたが、最後にここで今一度掲載させてください。

“…(Z世代の文化消費の価値と威力がもたらすのは)内需を刺激し、経済の質の高い発展をサポートできるだけでなく、ハイクオリティの文化的製品の世界進出を推進する … “

Z世代が多くのブランドから注目を浴びているのは、情報の拡散力や次世代の消費者だという理由だけではありません。彼らと共に市場を創り上げていくことこそが、一人ひとりの自立した消費とプロダクトの成長を押し上げることに繋がるからです。
経済市場ではこう語られているZ世代ですが、一方で地球環境という別の大きな視座に立ってみると『Z世代にとってはインターセクショナリティ(交差性)が全て』というナオミ・クラインの言葉からは、今まさに地球全体で足並みを合わせ向かっていくべき持続可能な社会“を牽引するポテンシャルが彼らに秘められていることを感じ取れます

経済と地球環境。
今後年々社会に進出していくZ世代は、この二つとどう関わり、どう変えていくのか…。今後とも彼らの動向やトレンドをキャッチアップし続け、”持続可能”を主軸に新たな世界へと導いてくれることを期待し続けたいと思います。

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