飲酒して出社するほど…新卒がぶつかる不安障害の壁

Works

今春から新社会人として働き始めた人たちが、早くも入社1ヶ月を迎えました。

昨年のコロナ禍同様にリモートワークや控えめな出社頻度で4月を過ごした新入社員も少なくはなく、慣れない環境に気疲れしてしまうことも多かったのではないでしょうか?
この先は5月病や6月病など、ふとした拍子に心を病んでしまう人が多く現れる油断ならない時期でもあります。心に支障をきたす不安障害は国内人口の10%が抱える可能性があるといわれており、これを読んでいるあなたも『まさか自分なんかが』と思うかもしれません。しかし、これは本当に「誰にでも起こり得る出来事」であり、かくゆう筆者も新卒1年目のこの頃メンタルに支障をきたすことがありました。

このnoteは、これから書き記すSさんのような不安障害を持った人を友人・同僚・会社の部下として持つ人たちに届けたい。それは、誰にでも起こり得ることであり、適切な処置や事後対処を知っているだけで少しでもストレスを軽減できるんだということを。
そして、この記事の読者であるあなた自身も不安障害を自分ごととして捉え、もし周りの誰かや自分自身がそうなったとしても、適切なアクションを取れるよう何らかの形で寄与できたなら幸いです。

ー 『就業後、オフィスを出ると涙が止まらなかった』

2020年3月、Sさんは公立大学を卒業。
大学で学んだ地方創生や地域活性化などの知識を活かせる関連分野の企業に入社が決まり、コンサルティング部門に配属されました。
仕事に就いてからは、大学で学んだ知識だけでは業務を進められないことを実感しながらもとにかく必死に働きました。…その時にはまだ、Sさんは自身が抱える発達障害「吃音」を深く気にしてはいませんでした。

コロナ禍の影響があったものの、Sさんの会社の方針では通常出勤で業務が進められている。仕事に慣れてきた頃、オフィスでの電話受けや取引先との商談の最中、Sさんは自分の吃音が気になり始めた。

『しゃべるという当たり前のことが、自分にだけできない。
どうしてできないんだろう…?』

吃音が出ないよう、言葉に詰まらないようにと意識すればするほど、吃音が出てしまった。普通の人にとっては造作もない「しゃべる」ことが、自分には上手くできない。
電話を受け、他の社員へ取り次ぎをする。そんな時でさえ、不安が頭をよぎる。『吃音で言葉に詰まって間があいたら、気まずい空気になってしまわないか』『もしかすると他の社員から変な目で見られているんじゃないか』
退社後、オフィスを出た途端涙が止まらなくなってしまうこともあったといいます。

仕事を終えた後はもとより、よくお酒を飲んでいたというSさん。
思い悩みや不安が激しくなるにつれ、無理やりお酒で不安をかき消し、酔いで眠気を誘ってから寝床に就くようになりました。朝、不安の高まりでどうしても会社に行きたくないという時、『お酒を飲んで行けば、不安を紛らわすことができるかもしれない』と思い立ちお酒を飲んで出勤することもあったようでした。

そんなある時、Sさんのいない所で、上司がSさんについて話しているところに遭遇しました。

『Sさんって喋る時、言葉に詰まり過ぎじゃない?』

その時Sさんは、上司が話していたことが本当だったのか、不安の強さゆえにエスカレートした被害妄想だったのか、それさえも区別がつかない状態でした。直後、ネガティブな方向に向かっていた心は、一気にどん底へと突き落とされます。

その後Sさんは、「社会不安障害」と「うつ病」だということが判明しました。

Sさんが所属するコンサルティングといえば、一般的に企業の中でもかなり重要な役割を担いソロプレイになることが多い業種。大学で学んだ専門領域の企業ということもあり、他の同期よりかは予備知識を持ってのスタートだでした。そのため配属当初から、『周囲から期待されている』とプレッシャーを感じていた。
指示された業務で分からないことがあっても可能な限り自力で解決しようと努力しましたが、残念なことにその努力は、上司に”あれこれ言わなくとも出来る子”と認識させてしまった。
新たな業務で難所にぶつかっても、Sさんを”出来る子”と認識した上司は困っているSさんに気付くこともなく、またSさんも期待されているというプレッシャーに押しつぶされ、分からないところを上司に聞こうとはできず、悪循環に陥り仕事を上手く進められなくなっていきました。

そんなタイミングでSさんは、『喋る時に詰まり過ぎじゃない?』という言葉を聞いたのでした。

ー 「当たり前」というプレッシャー

聴く、見る、そして、話す。

私たちが日々何気なくこなすこれらの動作は、実は当たり前なことではありません。
普段目にしているディスプレイの色を、視覚障害を持った人は判別できないかもしれない。駅ホームで流れるアナウンスが、聴覚障害をもった人には轟々と鳴る音にしか聞こえないかもしれない。
Sさんのように発達障害の一つである吃音があると、話し出すのに時間がかかってしまったり、スムーズに話が進まないことがあるかもしれない。
Sさんの吃音が社会不安障害とうつ病併発の引き金となったように、
そうした「当たり前」にストレスに感じ、精神に支障をきたす不安障害(うつ病・パニック障害・強迫性障害・社会不安障害・心的外傷後ストレス障害)が発症してしまうことは誰にとっても起き得ることなのです。

サムネイル

しかし、これらはいずれも外面的には判別できない症状。
Sさんは、心が落ち着いているタイミングを計らい、親しい同僚や友人に自身の症状を打ち明けました。病院に通い薬を処方してもらってからは、副作用の関係で仕事に支障がでる可能性もあったため職場の上司にも症状を伝えたそうです。

ー 背中を押してくれた「フォロワー2人のSNSアカウント」

通院を決めるまでは、『これくらいの症状で病院に罹っていいんだろうか』と不安に苛まされたSさん。
インターネットで症状を検索し調べたり、さまざまな病院のWebページに載っているセルフチェックを試みるものの、結局はどれも”一般的にいわれている症状”を集めただけであって、Sさん当人の実症状を反映していなくなかなか通院を決心できませんでした。

ただ幸いにもSさんには、同じ境遇にあった信頼のおける友人に間接的に相談できる環境がありました。
決定打としてSさんの背中を押してくれたのは、心療内科に通う小学生の頃からの友人Rさんの存在でした。Sさんは時折、Rさんを含めたフォロワー2人だけのTwitter裏アカウントで、『しんどい』と、心の内をツイートすることが。すでに心療内科に通院していたRさんは、そう呟くSのさんの心境をよく理解してくれました。

セクション4

『早いうちに行った方がいい』
信頼できるRさんの言葉に励まされ、Sさんはとある病院に行くことを決めました。認知行動療法(メンタリング)だけに頼らず、薬も併せて使用する方針の担当医はSさんの症状をしっかりと受け止めてくれました。

『医学的に改善されると証明されている
病院に通い医療を頼ることに間違いはない』

勇気を出して病院を訪れたSさんに担当医がかけてくれたこの言葉は、今でも心に残るほどSさんを安心させてくれたようでした。

ー 障害と関わる全ての人に伝えたい3つのこと

不安障害や発達障害を抱える人へSさんが伝えたいことは3つ。

「きっとみんなは、優しいから」

まず1つは「早くまわりの人と医療機関に頼ること」。
気持ちが落ちると、自分には話を聞いてもらうほどの価値なんてないと思い込み、どんどん相談しにくい心境になっていきます。学校の同級生やSNSの友人、同僚、言っても大丈夫と思える誰かに向けて、まずは勇気を出していま困っていることを伝えるべき。

『みんな受け入れようとしてくれて、
自分が思っているよりも、きっとずっと優しいから』

不安障害は医学的処置で改善できるものなので、インターネット上の知識でなく専門医を頼ることは然るべきアクションであり、限界を感じる前に診察してもらうことが先決です。

「収入源と冷静さ」

2つ目に挙げるのは、「出来るならば今ある仕事を辞めないこと」。
不安障害を持った段階では、正常な判断はできない状況です。
そうした環境下で退職や働き方を変えると判断するのは非常に危険で、もしかするとその選択を一生後悔するかもしれない。加え、仕事を手放してしまえば収入も絶たれ通院するお金を捻出できなくなり症状も悪化してしまう”負のスパイラル”に陥るおそれがあります。

Sさんは、一旦は休職という選択を優先させ辞めるという判断は元気になった時に決めるべきと強調しています。

「合理的配慮」

そして3つ目に、「合理的配慮を申し出ること」。
2016年4月に障害者差別解消法が施行され、事業者は障害のある人への「合理的配慮」を取り便宜を図ることが求められています。当法での「障害」は、発達障害・身体障害・精神障害を指し、Sさんの吃音や社会不安障害、うつ病も包含される領域です。

合理的配慮を申し出ることで、事業者は負荷のない範囲内で申告者への配慮を実施する必要があります。”配慮”というと、遠慮がちな日本人からすれば申し出にくいこともあるかもしれませんが、従業員が職場に居易い環境を整える責務が”法律として“事業者に課されているのです。
もしも理解のある職場環境であるなら、症状を抱えて働くストレスを少しでも和らげられるよう、合理的配慮の申告も選択肢の1つとして知っておくべきでしょう。

ー さいごに

今年3月には、この障害者差別解消法の改正案が閣議決定しており、単に事業者は合理的配慮を”求められる”だけでなく”義務付ける”方針へと向かっています。

セクション6

インタビュー中、Sさんにうつ病と社会不安障害を患ったのはいつだったかと尋ねると、『わからない、気付いたらそうなっていた』と答えていました。
とりわけ不安障害についていえば、Sさんのように「気づいた時には…」というケースが多いようです。Sさん自身も、『誰にでもなる可能性のあるものだからこそ、自分や周りがそうなった時適切な対処が出来るよう、少しでも障害について適切な知識を備えておいてほしい』と締め括ってくれました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました